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自治会加入率9割超の“市民力”と共に「住みやすさ日本一」が実感できるまちへ〜滋賀県守山市〜

京都、大阪のベッドタウンとして知られる滋賀県守山市。
国内で人口減少が進むなか、同市の人口は市制施行以降、増加し続けています。
その理由に近隣都市へのアクセスの良さが挙げられていますが、
聞けば、市制施行から継承される“まちづくりの理念”が奏功しているといいます。
その詳細を守山市・商工観光課の稲田氏に伺いました。

「のどかな田園都市」というぶれることのない市の標榜

滋賀県南東部に位置する守山市は、古くから中山道の宿場町・守山宿として栄えてきた歴史があります。その町並みは今も残り、町家を活用した「うの家」や「中山道街道文化交流館」は憩いの場として利用されています。琵琶湖を臨む沿岸部は漁業が盛んで、北中部はほ場整備され稲作も市の主要産業となっています。近年、観光振興にも力を入れる守山市には琵琶湖の岸辺に近代的な美術館が建築され、多くの公園ではバラや桜、ヒマワリ、コスモスなど四季を通じて様々な花を楽しむことができます。また、市内には、JR東海道本線(琵琶湖線)が走り、新快速の停車する守山駅から京都駅までは約25分、大阪駅までは約55分での往来が可能で、主要道路に関しても県道が5本走っており、近隣都市への移動も便利だといいます。

住環境が整ったこともあり、1970年の市制施行時、約35,000人だった人口は84,904人(令和3年11月30日現在)にまで増加しています。この現象について守山市・都市経済部商工観光課の稲田氏は「確かに交通の利便性が高いところが市の人口増加に影響を与えていることは間違いありません。ただ、利便性の高さだけが人口増の要因かと言えば、そうとも言い切れません。考えられるのは、市が誕生してから現在まで継承されているまちづくりの標榜「のどかな田園都市」です。ベクトルがぶれなかったおかげで、都市基盤や生活環境を充実させる一方、豊かな自然や田園風景をしっかりと残すことにより、都市と自然が調和した“住みよいまち”として人気を博しているのだと思います」と話します。

守山市が描くまちづくりの基本理念「のどかな田園都市」

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特徴は「都市と田園の調和」。広がる田園風景、そして自然の魅力を兼ね備えながら医療施設、教育施設、交通網、地域サービスが充実。幅広い世代が住みやすさを実感している。

市民の力で復活したホタルのまち ・ 守山

「のどかな田園都市」は、“ホタルのまち・守山”をも復活させています。守山は、古くからゲンジボタルの群生地として知られていました。守山のゲンジボタルは皇室にも献上されたこともあり、“ホタルの発祥地”として初めて国の天然記念物にも指定されていました。しかし、戦後、農薬や家庭排水等による水質悪化や水源の減少等が原因となり、ゲンジボタルは絶滅。そこで1979年から市は、自然環境を取り戻すため、守山が輩出した故・南喜市郎氏のホタルの研究結果を参考に「ホタルのよみがえるまちづくり事業」に着手します。市内の公園内に人工河川、研究室を整備し、ゲンジボタルの室内飼育、ゲンジボタルの餌となるカワニナの養殖を行い、人工増殖の研究を開始。その結果、現在では多くのホタルが飛び交うようになったといいます。この点に関して、稲田氏は「これは市民、環境団体、企業、学校、市が一体となって取り組んだ結果だと思います。ただ、ゲンジボタルが生息しても以前のように、環境を悪化させてしまっては元も子もありません。しかし、現在は市民が保全活動に賢明に取り組み、自治会ごとに川辺や周辺の清掃活動を自ら実施しています」と話します。日本で自治会加入率の低下が問題視されているなか、守山市の自治会加入率は9割を超えているといいます。各世代が力を合わせて地域づくりを行う。その姿勢が至るところで見られるそうです。

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まち中を縦横無尽に流れる小さな川には、自治会ごとに注意喚起を促す看板が設置されている。

環境を整備したことで自発的な向上心を養う

稲田氏は、近年見られる子育て世帯の伸びについて「教育の環境」にも触れています。「守山市内の小学校・幼稚園・こども園・保育園では英語指導助手(ALT)※による“ハローイングリッシュプロジェクトを実施しています。これは、幼少期から英語に慣れ親しんでもらうことを目的にした取り組みで、昼食や休み時間を英語指導助手と一緒に過ごしたり、英語で歌を歌ったり、楽しみながら英語に触れあう機会を創出しています。そのほか、教育環境づくりといった点で、守山中学校の建て替え工事では校舎を風や太陽光などの自然エネルギーを最大限に利用することで、『消費エネルギー0』を目指す、スーパーエコスクールの校舎にしています。生徒たちにはこの校舎で学んでもらうことで、賢く自然エネルギーを利用し、持続可能な循環型社会を作り出す大切さを学んでほしいと思っています」。また、他の施設でいえば、守山市立図書館も新たに生まれ変わり、市民の“知の広場”として親しまれています。詳細を見ると310席を誇る座席数、蔵書可能冊数は38万冊、雑誌は280タイトル。健康医療情報コーナー、子育て支援コーナー、起業就労支援コーナー等、市民が興味のある本を探しやすいように配慮されているそうです。教育の環境を新たに整えたことで、自ら学ぶ姿勢を見せる子供が増えたといいます。

英語指導助手(ALT):
Assistant Language Teacherの略で、外国語を母国語とする外国語指導助手を指す。児童・生徒の英語発音や国際理解教育の向上を目的に各教育委員会から学校に配置され、授業を補助する。

うの家

元内閣総理大臣・宇野宗佑氏の生家「うの家」。市が建物を譲り受け、憩いの場として活用する。

びわこ地球市民の森

子どもが楽しく遊べる複合遊具や、多彩な滑り台が楽しい大型遊具が揃う「びわこ地球市民の森」

守山中学校

2016年11月に改築された守山中学校。旧校舎は50年以上経ち、耐震性不足などの課題があった。

守山図書館

隈研吾建築都市設計事務所により設計された「守山市立図書館」は、新たな市のランドマークに。

村田製作所の企業誘致がさらなる守山市の進化に

市制施行から50周年を迎えた2020年、守山市はこれまでまちづくりの理念として掲げていた「のどかな田園都市」をさらに進化させ、市民一人ひとりの心身の「豊かさ」、自然環境や教育文化等の「豊かさ」を追及した「豊かな田園都市」を50年先の“将来のまちづくりビジョン”に掲げています。そんな折、電子部品の大手企業・村田製作所(本社:京都府)の研究開発拠点の建設というニュースが守山市に舞い込みます。

村田製作所による用地の取得は2022年に行われ、23年度に着工、25年度に完成する見込みで、研究開発拠点が整備されるのは、JR守山駅東口にある市有地で、現在はホテル・レストラン等や駅前スポーツ広場、駐車場の用地として活用されている場所。敷地の面積は8329平方メートル相当あり、資料によると、同社は製品開発や製品応用に関する研究開発を行う施設を建設する計画といいます。

この件に関して守山市は「村田製作所は世界的企業であり、今回の新施設は、市内最大規模の雇用を創出するとともに、村田製作所の研究開発拠点となり、多くの頭脳集積が図られ、地元企業や起業者等との連携、さらには、子どもたちへのSTEAM教育※の提供等の連携・協力を頂け、地域の発展に大きく資するものと考えております」と市民へメッセージを公表しています。

STEAM教育:
Science、Technology、Engineering、Arts、Mathematicsの頭文字で、理系教育をベースに時代を切り開くための教育

建設予定

建設予定の詳細位置図

研究開発拠点

村田製作所の新しい研究開発拠点が整備されるJR守山駅東口すぐそばの約8329平方メートルの敷地一帯

企業誘致に力を入れる滋賀県の風土

実は滋賀県は一般機械や電気機械、電子部品・デバイス、化学工業等、ものづくり企業が多く立地する全国屈指の内陸工業県として知られています。敷地は10ha以上で従業員は1000人以上、大企業が有する工場が多いのも特徴で、滋賀県には販売可能用地および計画中の地域だけでも12の産業用地があり、守山市にも50社以上の企業が立地する「古高工業団地」があります(現在、敷地をさらに拡張し拡張エリアは「横江工業団地」として機能)。また、気象庁や国土交通省のデータによると、地震や水害などの自然災害が少ない地域ということも企業誘致の大きな受け皿となっているようです。

今回の村田製作所の守山市参入に関して稲田氏は「新たな企業、それも村田製作所のような大企業が駅の近くに研究開発拠点を建設されるということは、駅前の再整備といった点で、さらにまちも発展していくことと思われます」と話し、「守山市も県同様、企業誘致にも力を入れており、それは税収といった観点だけではなく、まずは仕事をつくって雇用を生み、雇用が新たに生まれることで人が集まり、人が集まることでまちができる。そのような循環を構築するため推進しています」と話します。続けて「守山市は子育て世代を中心に年間約600人の人口増加が続いており、2040年までこの現象は続くと推測されています。そのため、労働力の確保がしやすい面もあったのでしょう。村田製作所の参入が合意に至ったのもそういった市特有の背景が合致したからだと感じています」と話します。

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守山市 都市経済部
商工観光課 課長
稲田 斉氏


変り続けるまちで抱く不動産事業者の想い

「のどかな田園都市」から「豊かな田園都市」へ。
市制施行50周年を経て、次なるまちづくりに向けて舵をきった守山市。
果たして、その地で事業する不動産事業者の想いとは。
株式会社Real代表の津田啓吾氏に話を聞きました。

津田啓吾

滋賀県野洲市出身。大手不動産会社を経て2013年に独立し、株式会社Realを設立

市民の心に響く市政が人口増加の現象を導く

―Realの業務内容を教えて下さい。

守山市を中心に、近隣の野洲市・草津市等で土地の買取や開発、仲介並びに管理業など、不動産取引業務全般を行っています。
また、建物の新築工事、住宅リフォーム工事等も行い、企画、設計から携わることもあります。

―守山市で事業を展開するようになったのはいつ頃からですか。

2009年に会社を立ち上げたので、13年目になります。自宅も市内にあり、土地勘もあることからこの地を拠点にしました。

―守山市は人口増加の著しいまちです。
不動産事業者から見て、その背景には何があると考えていますか。

行政が確固たる考えを持って市政を行っていることです。特に現在の市長は、“教育”に力を入れていることもあり、子育て世代の流入が増えていると聞きます。市内の中学校や図書館もきれいに改築されましたし、子供たちの施設が次々と整備されています。守山市に来られる親御さんたちは、そういった情報を調べてから来るといった話も耳にします。

行政と市民の距離がないところもそう。私も市長と話をさせてもらったことがあります。

―どのような話をしたのですか。

守山市の空き家の現状やまちづくり等に関した話です。

現状、空き家の状況は他市と比較して、対策を要する状況ではありませんが、増えていることは事実です。そこで私たち不動産事業者は独自に調査を行い、古い空き家があれば、オーナーに「遊ばせておくのはもったいなから誰かに貸しませんか」と声かけをして、借家人には自由にリフォームできるといった条件等をつけて、マッチングさせる、そんな活動をしています。このように働きかけているのも「守山市のまちなみを壊したくない」「あるものを利活用して維持したい」。そのような想いがあるからです。

まちなみを最優先に今後も事業に従事したい

―人口増加とともに来店される客層に変化等はありますか。

確かに変わりましたね。子育て世代はもちろんですが、いまは大手企業のお客さんの来店が増えている印象を受けています。近隣の市には京セラ等の大企業も多くありますから、そこで働く方々が守山市に住まいを探しているようです。また、数年後には村田製作所の研究センターができるとも聞いています。

―期待するところはありますか。

大きな人の流れが起きると思います。人が動けば物件も動くでしょう。われわれにとっては景気がよくなりますからありがたい話ではあります。甘んじていれば、地価相場も上昇していくでしょう。でも、そのような状況にはならないで欲しいというのが正直な想いです。現在も相場上昇の兆候は見られ、商業地が上がるのは当然ですが、住宅地に関しては安定供給を維持したいです。

―事業を通じてどのように地域貢献をしたいと考えていますか。

私たちは住宅地を作るといったことに携わっていますので、都会でよく見られたような乱開発ではなく、きれいなひとつのまちをつくるといった精神で今後も地域に貢献できたらと考えています。その考えを維持して携わっていれば、今以上に人が集まるにぎやかなまちになると思います。

株式会社Real

株式会社Real

住所:滋賀県守山市吉身2丁目4番12号
電話:077-532-4060
FAX:077-532-4058
[ホームページ]
https://www.realshiga.com/



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